建具の豆知識
戸車の交換方法は?交換が必要なのはいつ?引き戸に関する疑問を解消
引き戸を開閉する際、ガタガタ音がしたり、戸が重たく感じることはあるでしょう。昔はもっとスムーズに開閉ができたのに、最近は力を入れなきゃ動かない。「建物が古いから仕方ないのかな」と諦めている方は、ちょっとお待ちください。
そのような状態は、もしかしたら引き戸の戸車に問題があるかもしれません。戸車を少しメンテナンスするだけで、状況が大きく改善することがあります。
このコラムでは、戸車についての知識や、メンテナンスの方法、また戸車の交換方法についてご紹介します。引き戸の不調にお悩みの方は、ぜひご参考にしてください。
引き戸になくてはならない「戸車」とは?
「戸車」と聞いて、引き戸のどの部分をさしているか、分かる人は少ないでしょう。名称自体はあまり知られていませんが、戸車は引き戸を使ううえでなくてはならない部品です。実際どの部分で、どのようなはたらきをしているのか、詳しく解説していきましょう。
引き戸は「電車」、戸車は「車輪」に例えられる
戸車は、引き戸の下についている車輪のようなものです。床に設置されたレールをなめらかに滑らせることで、引き戸という電車がスムーズに開閉できます。この車輪がないと、電車はレールの上から動くことができません。
また、戸車が消耗して形がゆがむと、開閉時の力の入れ具合によっては、レールから車輪が外れて脱線してしまいます。引き戸を最小限の力で開閉させるには、形が整った戸車が必要なのです。
戸車の種類と材質ごとの特徴
戸車にはさまざまな種類があります。レールとの接地面が半円形型になっている「丸型」や、四角くなっている「角型」のほか、接地面の中心部だけとがっている「V型」などもあり、これらは、レールの形に合わせて使用されます。
また、車輪部分は材質の異なる素材で作られています。一般的に使われている戸車は、鉄製の車輪ですが、湿気の多い部分にはステンレスが使われるなど、場所によって素材を選択しなければなりません。ほかにも、ナイロンやゴムなど、状況に合わせて使い分けていくのです。
鉄製のものは強度がありますが、錆びやすいことが難点です。長年使っていたり、湿気が多いところで多用すると、錆びついてキュルキュルと高音を発します。この音が聞こえてきたときは、戸車のメンテナンスをおこないましょう。
引き戸にこんな不調があれば戸車の交換が必要
年月が経つにつれて、引き戸が音をたてたり、スムーズに開閉できなくなってきます。多くの場合、建付けが悪くなったのかと、引き戸自体の問題を考えがちです。しかし、その不調は戸車に原因があるかもしれません。
戸車がすり減って床を擦っている
引き戸を開け閉めした際に、ゴリゴリという音が鳴るときは、戸車がすり減っている可能性があります。戸車がのすり減りにより、戸の部分が床を擦ってしまうのです。
開閉に問題がなくても音が鳴っているのであれば、戸車のメンテナンスをおこなってください。戸車の様子を見て、必要であれば高さの調節をしてください。
引き戸が重く感じたり、ガタガタしたりする
引き戸の開閉に問題が出てきたら、戸車の交換をおこなってください。戸車も、使い続ければ劣化していきます。戸車の寿命は3,4年と言われています。それ以上長く使用しているのであれば、交換を視野にいれましょう。
引き戸は毎日使うものです。そのため、毎日じわじわと消耗していきます。毎日使っていると、引き戸が重くなっていることに気づかずに使い続けることもあるでしょう。戸車を交換して、初めて「この引き戸、こんなに開けやすかったのか」と気づくこともあります。
戸車にゴミが詰まっている場合はゴミ除去+潤滑油!
引き戸がうまく動かない原因に、「ゴミの詰まり」があります。まさかと思う方もいらっしゃるでしょうが、戸車に毛やホコリがはさまり、引き戸の機能が落ちてしまうことは少なくないのです。
入念にお掃除をするとき、レールの部分はチェックするかもしれませんが、戸車にはなかなか目がいかないでしょう。レールにゴミが落ちた状態で引き戸を開閉すると、ゴミが戸車に巻き込まれてしまいます。除去されないゴミが溜まり、動きに影響が出てしまうのです。
引き戸の滑りが悪い、開閉しにくいと感じたときは、戸車にゴミがはさまっていないか確認してください。ゴミがはさまっているときはすぐに取り除きましょう。また、日ごろからレールの上をこまめに掃除しておくようにすると、戸車のトラブルを防ぐことができます。
ゴミの除去をおこなっても滑りがよくない場合は、潤滑油をさしてください。鉄製の戸車は錆びやすいため、湿気に影響されてすぐに動きが悪くなります。油をさすことで、戸車の動きをよみがえらせ、引き戸をなめらかに開閉することができるのです。
戸車の消耗と同じように、ゴミや錆びも徐々に蓄積していきます。トラブルが表面化したときに慌てないよう、引き戸のメンテナンスは定期的におこなうことをおすすめします。
引き戸の戸車を自分で交換する方法
引き戸の戸車は、自分で交換することができます。この章では、お家でできる戸車の簡単な交換方法をご紹介します。すべての引き戸に当てはまるものではないため、あくまで一例としてご参考にしてください。
戸車の交換作業をおこなう前に、あらかじめ戸車の大きさを確認し、同じものを用意しておきましょう。戸車の大きさが上手にはかれないときは、戸車を外してお店に持っていき、店員と相談しながら選んでください。
1.引き戸を外す
まず、引き戸を外してください。倒れないよう、できれば二人がかりで作業しましょう。ガラスがはめ込まれたタイプの引き戸を外す際は、十分に注意して外してください。
2.戸車を外す
引き戸を外し、横にします。作業中に動かないよう、しっかりと固定し、戸車を外しましょう。たいていの戸車は、上下の二か所を木のネジによって止められています。このネジを外すと、戸車を取り外しができるようになります。
3.新しい戸車を取り付ける
戸車を取り外した後は、きれいに掃除をしてください。戸車を外す機会は、めったにありません。一度取り付けを終えると、しばらくは触れることがないでしょう。せっかくの機会ですから、入念に汚れを取り除きましょう。
掃除の後は、用意していた新しい戸車を取り付けます。取り外しと逆の順序で作業をおこなってください。
4.引き戸を戻す
最後に、引き戸を元に戻しましょう。戻したら、必ず動作の確認をしてください。戸車は正常に動くか、戸を閉めた状態のとき、隙間ができていないか見ておきましょう。また、鍵が付いている引き戸は、きちんと鍵が使えるかもチェックしてください。
なかなか上手くいかない場合は、建具屋に修理依頼を!
戸車の交換は簡単におこなうことができますが、引き戸の状態などによっては上手く交換できないこともあります。引き戸やネジが劣化しており、元に戻せないといったトラブルも出てくるでしょう。
もし対処に困ったときは、無理に作業を続行しようとせず、建具屋に相談しましょう。建具屋は家具についての知識が豊富です。建具屋に見てもらうことで、元の状態に戻すことができるでしょう。
まとめ
いつも使っている引き戸が、開閉するたびにガタガタと音をたてる際は、戸車に問題があるかもしれません。戸車のメンテナンスをすると、静かになることもあります。
また、引き戸が重たくなってきたら、戸車の変え時です。戸車にも寿命があるため、3年に1度を目安に交換をおこないましょう。戸車は誰でも簡単に交換できます。ホームセンターなどで新しい戸車を買ってきて、古いものと交換してください。
交換作業が上手くいかない場合は、交換方法が引き戸に合っていない可能性があります。そのような場合は、問題が重症化する前に建具屋に修理の依頼をしてください。上手に専門家の力を借りることで、よりよい仕上がりが期待できます。